東京木場にある醸造酢メーカー横井醸造工業(東京都江東区)は一本気な会社だ。手間の掛かる醸造法を貫き、伝統を受け継ぐ心意 気を大事にしている。
同社の主力である赤酢「與兵衛(よへえ)」はまさにその心意気で作り続けられている商品だ。一般的な酢である「米酢(白酢)」は名前のとおり米が原料なのに対し、赤酢の原料は酒粕。醸造期間の短い米酢に比べ、3年以上寝かせる必要がある赤酢は手間の掛かる食材だ。しかし、同社は伝統の醸造方法にこだわり製造を頑なに続けているのだ。
その理由の一つは味にうるさい江戸前鮨の職人から圧倒的な指示を受け続けていることにある。江戸時代、元禄の初めに醸造技術が発達した赤酢は江戸前鮨に欠かせない食品だ。「ミシュランガイド2009」で星のついた寿司店21店中 16店で使用されていることがその一つの証である。
そんなプロに愛される同社が、近年ではお酢ブームの後押しもあり、一般消費者からも熱い視線を集めている。
「以前は米に色が着くのが嫌だと言って敬遠される方もいたのですが、本物志向のお客様が『味にコクがある』『アミノ酸豊富で体にいい』と愛用してくださることも増えてきました」(生産本部・宮尾誠部長)
先々代社長が中国で見つけてきた古来の醸造法で作る「真黒酢」も人気商品だ。東京のメーカーであるため流通している小売店も関東圏が大半だったが、最近では口コミが広がりインターネットを通して全国から注文が舞い込んでくる。
江戸発の一本気なこだわり商品は一直線に全国の消費者へ届けられているのだ。
赤酢與兵衛
古典的江戸前酢の原点。約3年熟成させた酒粕を100%使用して粕酢に仕上げる。旨さ、コク、厚みが秀逸。
すし酢を作る場合、「與兵衛」はコクとうまみの成分がつよいので砂糖や塩などはひかえめにお使い頂いた方がスッキリするそうです。
真黒酢
中国伝来の(固体醗酵法)という特別な方法で製造。この製法は、原料も手間暇も通常の何倍も掛かりますが、他に類を見ないほど濃密で
リッチな黒酢が仕上がります。黒酢の最高峰という評判をいただくほどの良質な商品です。
ビジネスチャンス誌2009年10月号に掲載されました