広島県の内陸部、吉和地方は面積の94%が山林という大自然に囲まれた土地。近年はスキーやキャンプ、ドライブと森林リゾートとして人気を集めるこの地に隠れた名産品が存在する。それは自然豊かなこの地ならではの名水に育まれた「わさび漬け」だ。
昔からこの地で盛んだったわさび栽培だが、自然環境に左右される上、手間のかかる作業のため今では本格的に営む農家も数えるほどとなってしまった。そんな中、眞田わさび本舗(広島県廿日市市)は昔ながらの栽培法と商品作りを守り続けている店舗の一つ。二代目となる真田和明氏は、先代が築き上げたわさび畑を受け継ぎ、昔ながらの手作りでわさび漬けを作り続けている。
わさび漬けというと静岡名産の酒粕に漬けた商品が有名だが、同店の「わさび葉漬け」は一味違う。沢で作られた水わさびの新芽を用い、醤油漬けにされる。わさびが持つ旨みをそのまま味わえる逸品となっているのだ。また、わさびの葉や根と大根を漬けた「わさび大根漬け」も人気商品となっている
「わさびはただ辛いだけの薬味ではありません。その中に旨みがあることを知ってもらいたい。」
同店の商品は確かに辛味の中にも旨みが感じられる。この感覚が病みつきになり、毎年決まって購入するリピーターが増えているのだ。しかし、先代が引退してからは夫婦二人で栽培から製造までを行っているため、大量販売は行うことができない。直売店での販売とインターネットでの販売のみとしている。
夫婦二人が山奥で手作りしたわさび漬けは、じわじわとクチコミで広がりを見せている。
「わさび葉漬け」
新芽を自慢の醤油だしに漬けた定番の商品。
「わさび大根漬け」
青首大根と生わさびの葉、根を秘伝のだしに漬け込んだ人気商品。大根にわさびの辛味が染み込み、独特の味わいが出ている。
ビジネスチャンス誌2010年3月号に掲載されました